動的ストレッチと静的ストレッチの違いと効果について

運動前に準備体操を行うことは、子供のときに誰もが学校などで学んでいます。そして運動や筋トレ後にストレッチを行ってクールダウンすることも、ご存じの方は多いでしょう。

どちらも体を伸ばして筋肉をほぐす「ストレッチ」という動作ですが、ストレッチには「動的」「静的」の2種類があることをご存じでしょうか。

ここでは、動的ストレッチと静的ストレッチの特徴や効果、具体的なストレッチ方法などを紹介していきます。それぞれの特徴にあわせて行い、体を安全に鍛えていきましょう。

1.動的ストレッチとは?

まずは動的ストレッチの説明からです。動的ストレッチは「バリスティックストレッチ」や「ダイナミックストレッチ」とも呼ばれる、大きな動きを取り入れたストレッチです。反動を利用してリズミカルに筋を伸縮するもので、運動前のウォーミングアップとして利用されています。

1-1. 動的ストレッチの特徴

筋トレや運動でケガをしないように行うのが、動的ストレッチ。特徴としては、腕や脚をさまざまな方向に動かし、ねじったり曲げ伸ばししたりといった動きをリズミカルに行うこと。大きな動きがあるため、運動前に体を温めることに適しています。

学校の体育の授業などで「1,2,3」と掛け声つきで大きく体を動かす屈伸などが、これにあたります。しかしこの動的ストレッチで力がかかり、逆にケガをしてしまうこともあるため、最近ではウォーミングアップの途中から取り入れることが多くなっています。

1-2. 動的ストレッチの効果

動的ストレッチの効果は以下の3つです。

  • ケガの予防
  • 筋肉の力を発揮させる
  • 柔軟性のアップ

1-2-1. ケガの予防

運動前にダイナミックに全身を動かすことで、筋肉に余計な力が入らず、運動中のケガの予防に役立ちます。筋肉は通常、体勢を維持するためにガチガチに緊張した状態です。そのため、ストレッチなしだと力が入ったままで行うことに。スポーツや筋トレで余計な力が入っていると、負荷が関節などにかかってケガをする恐れがあります。

運動前には大きな動きでストレッチをして、緊張や余計な力を抜いておきましょう。

1-2-2. 筋肉の力を発揮させる

じっくりと筋を伸ばす静的ストレッチが主流となっていますが、最近の研究によると静的ストレッチを運動前に行うと筋力を低下させてしまうと報告されています。

筋肉は姿勢を維持するため、常に緊張状態を保っています。しかしその状態でいきなり運動をしても、体はスムーズに動かないでしょう。動的ストレッチであれば伸長反射を使いながら筋肉を温め、可動域を広げて動きをスムーズにできます。

運動前に動的ストレッチを行い運動できる状態にしておくことで、筋肉の力を十分に発揮できるのです。

1-2-3. 柔軟性のアップ

動的ストレッチを行えば、柔軟性のアップが期待できます。リラックスした状態で動的ストレッチを繰り返すと、関節の可動域などが広がって柔軟性がアップします。

体の柔らかさはケガの有無へ直結します。運動前にはできるだけ体を温め、筋肉を柔らかくしてから行ってください。

2.静的ストレッチとは?

続いて静的ストレッチです。静的ストレッチは「スタティックストレッチ」とも呼ばれていて、反動を利用せずにゆっくりと筋を伸長するストレッチです。

じっくりと筋を伸ばして緊張を緩めクールダウンしますので、運動後や筋トレ後に利用されています。

2-1. 静的ストレッチの特徴

静的ストレッチの特徴は、筋肉を一方向に伸ばすこと。さまざまな方向にダイナミックに動かす動的ストレッチとは対照的に、ゆっくりと時間をかけて行います。

2-2. 静的ストレッチの効果

静的ストレッチの効果は、以下の2つです。

  • 運動後のクールダウン
  • 全身のリラックス

2-2-1. 運動後のクールダウン

筋肉を伸ばした状態で反動をつけずに、10秒から30秒以上の一定期間そのままキープすることで、筋肉の緊張を和らげます。運動や筋トレなどで損傷した筋肉のケアに効果的ですので、現在は運動後に静的ストレッチをじっくりと行うことが推奨されています。

クールダウンをせずにそのまま日常動作へうつってしまうと、筋肉の損傷度合いによっては筋肉痛が発生します。運動後はクタクタに疲れていても、静的ストレッチを行いましょう。

2-2-2. 全身のリラックス

静的ストレッチでは深呼吸を取り入れながら行います。そのため、脳の興奮を鎮めて副交感神経を刺激し、リラックスできます。

じっくりと体をのばすために柔軟性もアップしますので、お風呂上りや寝る前に行うこともおすすめ。リラックス効果によって睡眠の質も向上します。

3. 運動前に行うべき動的ストレッチ4選

では具体的に動的ストレッチの方法を紹介していきましょう。運動前に行いたい動的ストレッチは、以下の4つです。

  • 全身の動的ストレッチ
  • 国民的体操・ラジオ体操
  • アップドッグ
  • ショルダーゲイター

3-1. 全身の動的ストレッチ

全身をリズミカルにしっかりと動かすストレッチです。

  1. 足は肩幅に開き、まっすぐに立つ
  2. 手は肩の上に軽くのせる
  3. 肘で半円を描くように、前後左右に10回大きく動かす
  4. 手をおろして、再びまっすぐに立つ
  5. 足は閉じ、手は腰へ添える
  6. 右太ももを持ち上げ、勢いよく前から後ろへと回す
  7. 左も同様に行い、左右交互にそれぞれ10回行う

いずれの動きのときにも、呼吸は止めないように意識してください。反動を使い、大きく動きましょう。しかし無理やり反動を大きくする必要はありません。体の状態を見ながら、徐々に動きを大きくしていきます。

3-2. 国民的体操・ラジオ体操

小学校などで学んだラジオ体操は、動的ストレッチ。前屈・後屈・側屈・ねじり運動・腕を振るなどの動きを左右均等にし、大きく動きます。

正しいフォームで行うと全身を3分間でまんべんなく動かすことができ、有酸素運動の効果も得られます。

しっかりと動きを学ぶため、最初は動画などを利用してフォームを確認してから行いましょう。できるだけ毎日行ってください。

3-3.アップドッグ

筋トレやランニングなどでは、腹筋や足の付け根の筋肉は必ずといっていいほど使用します。そのため、トレーニング前はお腹の筋肉を深く伸ばしておきましょう。動的ストレッチでお腹を伸ばすには、アップドッグが最適です。

アップドッグはヨガのポーズ。呼吸を深く繰り返しながら、しっかりと伸ばしましょう。

  1. うつ伏せになってシートやマットの上に寝転ぶ
  2. 手のひらを胸の横におき、脇をしめる
  3. 上体を起こし、手のひらと足の甲で床を押すようにする
  4. 視線は斜め上を見て、胸を開きお腹の筋肉が伸びているのを感じる
  5. 30秒ほどキープする

腰痛を持っている方など、腰に違和感がある方は無理をしない範囲で行ってください。

3-4. ショルダーゲイター

肩周辺を動かすので、特に肩こりに悩まされている方におすすめの動的ストレッチです。スポーツの前だけでなく、デスクワークの前や仕事の合間に行ってください。

  1. 床の上に正座になって座り、両手を後頭部の耳の後ろあたりに添える
  2. 胸と両肘を開いて、肘が肩と平行になるようにする
  3. 両肘を顔の前でくっつけるように閉じる
  4. また両肘を開き、2の状態に戻す
  5. 2から3までをリズミカルに行う
  6. 10回繰り返す

肘の開閉を行っている間、肘の位置が下がらないようにしましょう。肘は大きくゆっくりと動かすようにします。肩や腕に痛みがある場合には、無理をしないでください。

4. 運動後に行うべき静的ストレッチ4選

静的ストレッチでおすすめなのは、以下の4つです。

  • 首のストレッチ
  • 肩のストレッチ
  • 腕のストレッチ
  • 下半身のストレッチ

筋肉の様子を見つつ、時間を十分にかけて行ってください。

4-1. 首のストレッチ

首は重い頭を支え、常に緊張状態です。痛めないようにゆっくりと行いましょう。

  1. 床の上にあぐらをかいて座る
  2. 右手を頭の上から伸ばして左耳にあて、首をゆっくりと右側へ倒して左の首筋を伸ばし、15秒キープする
  3. 2のとき、左腕は真横に伸ばし、肩を内側へ回すようにして前へねじる
  4. 左右交代して同様に行う

4-2. 肩のストレッチ

肩の筋トレなどをした後には、必ず行いましょう。

  1. 床の上にあぐらをかいて座る
  2. 右腕を胸の前を通って左側へ伸ばし、左腕でそれを抱えて15秒キープする
  3. 2のとき、顔は右側を向く
  4. 左右交代して同様に行う

腕をのばしているとき、肩が上がり過ぎていないか注意してください。

4-3. 腕のストレッチ

  1. 床の上にあぐらをかいて座る
  2. 右腕を真上に上げ、肘で折って後頭部に垂らす
  3. 左手で右肘をつかみ、ゆっくりと左側へ押し下げる
  4. そのまま15秒キープ
  5. 左右交代して同様に行う

ストレッチ中、顔を下げないようにしましょう。正面を見て、呼吸を繰り返します。

4-4. 下半身のストレッチ

下半身をクールダウンするストレッチです。ゆっくりと時間をかけ、痛みの有無を確かめながら行ってください。

  1. 足を左右に開き、床に座る
  2. 右側の足を内側に折り畳み、右足のかかとを左太ももの内側へつける
  3. 右側へ体をひねり、手を前へ伸ばして上半身を前傾させる
  4. 呼吸を繰り返しながら30秒キープする
  5. 左右交代して同様に行う

伸ばした方の足はかかとを地面につけ、足先を天井へ立ててください。体の横側をしっかりと伸ばします。体をねじる範囲は個人差がありますので、大きくねじることは無理という方でも自分ができる範囲でねじっていきましょう。

まとめ:動的ストレッチと静的ストレッチは使い分けて効果アップさせよう!

ストレッチには2種類あり、1つはウォーミングアップに適している動的ストレッチ、もう1つはクールダウンに適している静的ストレッチです。

行うタイミングを間違えると効果が半減しますので、スポーツや筋トレ前には動的ストレッチを、トレーニング後には静的ストレッチを行いましょう。どちらもしっかりと行うことで、ケガをする割合をぐっと減らせます。安全にトレーニング・運動を行うためにも、ストレッチは欠かさないようにしてください。

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