アーノルドプレスの筋トレ効果を上げるコツと注意点

アーノルドプレスの筋トレ効果を底上げするコツと注意点

肩を大きく丸く鍛え上げたい、いわゆるメロン型を目指す人なら知っていて損はないトレーニングがアーノルドプレスです。

今回は、アーノルドプレスで鍛えられる筋肉や正しいやり方、効果を底上げするコツと注意点、ダンベルショルダープレスとの違いなどをまとめてお伝えします。

1.アーノルドプレスとは

アーノルドプレスは、代表的な肩のトレーニングであるダンベルショルダープレスを応用したものです。手首を回旋させながらダンベルを頭上に挙上することで、上半身全体に刺激を入れ、特に肩を鍛えることができるトレーニング種目です。

アーノルドプレスという名称は、映画「ターミネーター」で知られる映画俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏が考案し、ボディビルダーの現役時代に毎日行っていたことに由来します。

2.アーノルドプレスで鍛えられる筋肉

アーノルドプレスで鍛えられる筋肉は、肩の筋肉である三角筋です。腕を回旋させながら挙上するため、ダンベルプレス等のトレーニング種目よりも三角筋のより広い範囲にアプローチすることができます。

トレーニング種目の種類には、1つの関節のみを動かすアイソレーション(単関節)種目と、複数の関節を動かすコンパウンド(多関節)種目があります。アーノルドプレスはコンパウンド(多関節)種目に当たり、複数の関節を同時に動かすことで、複数の筋肉に刺激を入れて効率良く複数の部位の筋肉を鍛えることができます。

アーノルドプレスの動きは、前半は腋が開いていくサイドレイズのような負荷が掛かり、後半はダンベルショルダープレスのような負荷で肩の側面と前側の両方に刺激を入れることができます。

このように、アイソレーション(単関節)種目をそれぞれに行うよりも効率が良く、筋トレ初心者にも推奨されるのがコンパウンド種目です。

しかし、動きが複雑になりやすく、フォームが崩れやすいという難点もあります。また、ポイントを押さえないと腕や肩を傷めてしまうリスクも高まるため、正しいフォームとやり方をマスターして行いましょう。

3.三角筋の構造と働き

三角筋は、肩関節を屋根のように覆う形で位置し、筋肉を広げると三角の形をしています。表層にある筋肉のため、鍛えることで肩そのものを大きく、逞しくすることができます。

三角筋は肩の前側から背中側までの広い範囲を覆う筋肉であり、三角筋前部(前部繊維)、三角筋中部(中部繊維)、三角筋後部(後部繊維)の3つの部分に分類され、それぞれ担う役割が異なります。三角筋を鍛える場合は、ターゲットとする部分に合わせてトレーニング種目を変えていく必要があります。

3-1.三角筋前部

アーノルドプレスで鍛えられるのは、まず三角筋前部(前部繊維)です。

三角筋前部は、肩の前方に位置し、鎖骨の外側1/3~上腕骨に走行しているため、この2点を近付けたり(収縮)、離したり(伸張)することで鍛えることができます。

三角筋前部の役割としては、肩関節を屈曲する動き、つまり体の横に垂らした腕を前方に水平に上げる際に働きます。このため、三角筋前部を鍛える代表的なトレーニングにはフロントレイズがあります。

また、三角筋前部は肩の内旋(内側に捻じる動き)も担います。肩の内旋は、脇を占めた状態で、肘を内側に向ける動きです。実際にこの動きをしてみると、三角筋前部の収縮を感じられるはずです。アーノルドプレスでは、この肩の内旋方向への動きで三角筋前部を収縮させます。

3-2.三角筋中部

アーノルドプレスで鍛えられる2つめの部分は、三角筋中部(中部繊維)です。

三角筋中部は肩の側面に位置し、三角筋の中で最も大きな繊維です。鍛えることで肩の横幅を大きく、逞しく発達させることができます。

三角筋中部の役割は、主に肩関節の外転する動き、つまり腕を真横に上げる動作をする時に働きます。三角筋中部を鍛える代表的なトレーニングには、腕を真横に伸ばし、上下させるサイドレイズがあります。アーノルドプレスでも、肘を肩の位置まで上げた状態での上下運動が含まれるため、三角筋中部を鍛えることができるのです。

3-3.三角筋後部

三角筋後部は肩甲骨と上腕骨を繋ぐ筋肉であり、後ろから見た肩の見栄えに影響します。肩を伸展させる動作、つまり腕を後ろに引く動きの際に働きます。また、肩の外旋(外側に開く動き)も担います。

アーノルドプレスでも三角筋後部に刺激を入れることはできますが、三角筋前部・中部に比べると圧倒的に不十分です。三角筋後部をターゲットとする場合は、リアレイズ等の他の種目を取り入れて行うことをお勧めします。

3-4.各部位の特徴

三角筋前部・後部は筋繊維が平行に並んでいる構造の紡錘状筋であり、収縮するスピードは速いもののパワーは出にくいという特徴があります。筋長が長いため、しっかり伸び縮みさせ、低重量で回数を多く行うトレーニングが効果的と言われます。

一方で、同じ三角筋でも三角筋中部では、筋繊維が斜めに並んでいる構造の羽状筋を持っています。紡錘状筋である三角筋前部・後部とは対照的に、収縮するスピードは遅いものの力強いパワーが出せるという特徴があります。このため、高重量で回数を少なく行うトレーニングが効果的と言われます。

4.アーノルドプレスの基本的なやり方

基本的なアーノルドプレスの正しいやり方とフォームをご紹介します。

【正しいやり方とフォーム】

  1. 背もたれが70~80度の角度のインクラインベンチに座り、胸を張ります。
  2. 両手にそれぞれダンベルを持ち、ダンベルを縦にして太腿の上に置きます。
  3. 太腿でダンベルを持ち上げ、胸の前までダンベルを持ってきます(オン・ザ・ニー・テクニック)
  4. 手のひらが顔に向いている向きでダンベルを持ち、胸の前で構えます。この状態がスタートポジションです。
  5. 手首を外側に回転させながら、ダンベルを頭上へ持ち上げ、腕を挙上します。ダンベル同士を近づけていくイメージで行うと軌道が安定します。
  6. 腕を伸ばし、手のひらが前方を向いている状態にします。この状態がフィニッシュポジションです。慣れてきたら、フィニッシュポジションで数秒停止します。
  7. 再び手首を内側へ回転させながらスタートポジションまで戻します。
  8. 2~5を繰り返して行います。
  9. 15~20回×3セットを目安に行いましょう。

※オン・ザ・ニー・テクニックで始めの構えを作ることで、高重量のダンベルを扱う場合も手や肘などの怪我を防ぎ、スムーズにトレーニングを開始することができます。初心者の人もしっかりマスターしておきましょう。

5.アーノルドプレスの効果を底上げするポイント

正しいやり方とフォームに加えて、以下のポイントを押さえると、より安全で効果的にトレーニングを行うことができます。

5-1.フィニッシュポジションで腕を伸ばし切らない

フィニッシュポジションでは、腕を伸ばし切らないように注意します。腕をしっかり伸ばしてしまうと、腕の力でダンベルを支えてしまうため、肩に掛かっている負荷が抜けてしまいます。肘は伸ばし切る手前で止めましょう。

5-2.腕の上げ下ろしは一定のリズムで行う

アーノルドプレスは腕の上下のペースが一定でないと、疲労でダンベルを挙上しにくくなってしまうことがあります。一定のリズムで上げ下ろしをすることで、スムーズに行いやすくなります。

また、ダンベルを上げる時は素早く、下げる時はゆっくりと効かせるように下ろすことで、さらに負荷を高めることができます。

5-3.重量は少しずつ増やす

ダンベルの重量を選ぶ際は、最初はしっかりと扱える軽いものから始め、フォームが安定したら徐々に増やすようにします。高重量では、フォームの崩れに繋がりやすく、肩や腕を傷める危険もあるためです。重量の設定は慎重に行いましょう。

肩に無理な負担をかけて傷めないよう、まずは低負荷から始め、正しいフォームを身につけていきましょう。

5-4.腕を体の前で上下させる意識で行う

セットの後半になると、疲労のために脇が開いてしまいやすくなります。すると、負荷が抜け、アーノルドプレスを行うメリットが無くなってしまいます。脇が開かないように、体の前方で腕を上下する意識で行いましょう

5-5.上半身を使い、さらに効かせるテクニック 

三角筋の収縮をさらに高めるテクニックとして、フィニッシュポジションをとる際に、上体を少し前方へ出す方法があります。より負荷を高め、効率よく鍛えていきましょう。

6.アーノルドプレスでよくある間違い

ここでは、アーノルドプレス初心者が陥りやすいポイントを2点ご紹介します。間違ったやり方で行うと負荷が十分に掛けられず、アーノルドプレスをする意味がなくなってしまうこともあります。注意しましょう。

6-1.ダンベルを上げる動作と回旋する動作を別々に行ってしまう

ダンベルを上げる動作と回旋動作が別々になると、回旋動作には重力がかからないため、ショルダープレスと同じ負荷量となってしまう間違ったやり方です。しっかりとダンベルを回しながら上げることで、肩の側面と前面への自動的で強力な負荷を感じることができるはずです。

6-2.肩がすくんでしまう

肩がすくみ、上がってしまっている状態では、肩甲骨の動きに制限されるため、肩の痛みが出てくる場合があります。アーノルドプレスでは、広範囲にわたって肩を動かしていく必要があるため、柔軟に肩甲骨を使えるように肩を下げる意識で行いましょう。

7.アーノルドプレスとダンベルショルダープレスの違い

肩のトレーニング種目としてオーソドックスなのは、ダンベルショルダープレスです。

前述の通り、アーノルドプレスはダンベルショルダープレスを応用したトレーニングですが、この2つのトレーニングは似ているようで大きく異なります。

最も大きな違いは可動域です。スタートポジションにおいて、開始時にダンベルショルダープレスはダンベルを持った手を耳の横に置き、手のひらは正面を向いています。

一方、アーノルドプレスではダンベルを胸の前に構え、手のひらは顔側を向いています。この高さの違いから、アーノルドプレスの方は可動域が広いため、ダンベルショルダープレスよりも三角筋前部を伸張(ストレッチ)させることができるのです。

また、同時に手首の回旋運動が加わるため、収縮と伸張の2つの刺激を強力に入れることができます。

ただし、アーノルドプレスは回旋運動のために、通常のショルダープレスのようにバーベルでは行えない、ダンベル以上の高重量では行えないという側面もあります。

それほど高重量を扱わないトレーニング初心者はアーノルドプレスがおすすめですが、トレーニング上級者では、低重量で高回数ならばアーノルドプレス、高重量で低回数ならばショルダープレスのように2つを組み合わせて行っていくのもおすすめです。

8.アーノルドプレスの重量・回数・頻度は?

筋トレは、筋繊維を過度に使うことで損傷させ、適切な休息と栄養を取ることで損傷前よりも筋力が向上したり、筋肉が大きくなったりする超回復の効果を引き出すものです。

闇雲に回数を重ねて効果が得られるものではありません。適切な重量・回数で適切な頻度を守って行うことが重要となります。

トレーニング初心者の場合は、1部位当たり週1回3セット、上級者の場合は1部位当たり週2回6セットを目安に行いましょう。

また、以下のように筋トレの目的によってやり方を変えることも大切です。

8-1. 筋肥大を目指したい場合

アーノルドプレスで筋肥大を目指す場合に重要なポイントは、「正しいフォームで限界まで追い込むこと」です。6~12回で限界が来る重量を設定することが基本ですが、低重量でも高回数を行って正しいフォームで限界まで追い込むことができていれば、同等の効果が得られます。

8-2. 筋持久力を高めたい場合

筋持久力を高めたい場合は、重量の設定がポイントです。15回以上行って、限界が来る重さで行いましょう。

9.アーノルドプレスで効果的に肩を鍛え上げよう

いかがでしたか?今回はアーノルドプレスについてご紹介しました。ショルダープレスの応用であるアーノルドプレスは、効率よく複数の筋肉を鍛えることができるため、筋トレ初心者にもおすすめです。また、ショルダープレスや他の種目と合わせて、肩のトレーニング種目のバリエーションに加えるのも良いでしょう。

筋トレの目的とターゲットとする筋肉をしっかりと定め、特徴に合わせて効果的に肩を大きく鍛え上げていきましょう。

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