全身をバランスよく鍛えられるプルアップの筋トレ方法

筋肉がついた分厚く広い背中に憧れる男性は多いでしょう。筋トレを普段からしている方なら、背中の筋肉を大きくするためにプルアップ(順手懸垂)に取り組んだことがあるはずです。

しかし、プルアップは正しい方法で行わないと腰などを痛めてしまううえ、きちんとした効果を得られません。

ここではプルアップやそのバリエーションの正しいやり方、効果を上げるコツ、下準備の筋トレなどを紹介していきます。ぜひ参考にして、自信が持てる背中へ育てていきましょう。

1. プルアップで鍛えられる筋肉部位は4つ

プルアップで鍛えられるメインの筋肉は、背中です。プルアップは自重トレーニングであり、背中だけでなく腕やお腹など上半身をバランスよく鍛えられる筋トレメニューですが、やはり最も刺激を送れる部位は背中の筋肉。

では、以下の4つの筋肉部位を紹介します。

  • 広背筋
  • 大円筋
  • 僧帽筋
  • 三角筋

1-1. 広背筋

広背筋は背中の大きな筋肉で、脇から腰あたりまで広がっています。人体で最も大きな面積を持つため、鍛えるとその結果が目に見えやすい部位です。

役割は、肩関節の伸展や内転。特に伸展動作においては最も重要な働きをする筋肉です。

広背筋を鍛えれば背中が広くなるうえ、水泳選手のような逆三角形の体形となり、男らしい魅力が出る背中を作れます。さらに姿勢が良くなる効果もあるため、男女ともに積極的に鍛えていきましょう。

1-2.大円筋

大円筋はワキの下にあり、肩甲骨から上腕骨へつながっている筋肉です。広背筋と似た働きをし、広背筋をサポートする役割があります。肩関節を伸ばしたり内側へ回したりするとき、つまり腕を引く動作などで使うため、プルアップをすれば刺激を与えられます。

広背筋とはセットで鍛えるべき筋肉部位です。

1-3. 僧帽筋

僧帽筋は首から肩にかけて広がっており、肩を上下させる動きで使います。肩が凝ったと感じるときには僧帽筋が硬くなっているときです。

僧帽筋を鍛えると首から肩にかけてボリュームがアップし、猫背や肩こりが改善されます。特に現代人はスマートフォンの使用でストレートネックや猫背に悩まされている方が多いので、しっかりと鍛えたい筋肉部位です。

1-4. 三角筋

両方の肩をおおうようについているのが三角筋です。三角筋は前部・中部・後部の3つで構成されていて、それぞれに動きは微妙に違っています。

三角筋を鍛えれば肩幅を広くできます。普段の動きではなかなか鍛えにくい部位ですが、プルアップでは効率的に刺激を与えられますので、意識して筋トレに取り組んでいきましょう。

2. プルアップとチンアップの違いは?

プルアップとよく比べられる筋トレが、チンアップです。両者はどちらも懸垂ですが、大きく違う点は以下の2つです。

  • バーの握り方が違う
  • 鍛えられる筋肉部位が違う

両手でバーを持って体を引き上げる筋トレが懸垂ですが、プルアップは順手(手の甲が自分を向く)、チンアップは逆手(手のひらが自分を向く)で持ちます。

そして、バーの持ち方が違うことで刺激を送る筋肉部位にも変化がうまれます。プルアップは主に広背筋の上部分を、チンアップは広背筋の下部分に強く負荷を与えます。

背中を鍛える筋トレであることは違いませんので、最初は自分が好きな持ち方で行うことがおすすめです。その内、負荷を与えたい筋肉部位によって持ち方や手幅を変えていきましょう。

3. プルアップのバリエーション3つ

プルアップには手幅を変えることでバリエーションが他にも2つ、全部で3つあります。以下に紹介しましょう。

  • ノーマルプルアップ・・・肩幅より拳1つ分広い手幅。メインターゲットは、広背筋と大円筋
  • ワイドグリッププルアップ・・・手幅を肩幅より大きく広くとる。メインターゲットは広背筋と三角筋後部
  • ナローグリッププルアップ・・・手幅を肩幅と同じくらいか狭くする。メインターゲットは広背筋と僧帽筋

いずれにせよ、プルアップは背中に刺激を与える筋トレメニューです。そのため、腕だけに過度に負荷がかかっているようならフォームが間違っている可能性が高くなります。次でそれぞれの正しいやり方を紹介しますので、フォームに注意して行ってください。

4. プルアップ3種類の正しいやり方

では、それぞれの正しいやり方を説明していきます。基本動作は全て同じで、バーを握り、体を下から上へ引き上げるのですが、注意点などがすこしずつ違っています。

しっかり確認してトレーニングに取り組んでください。

4-1. プルアップの正しいやり方

基本の順手懸垂です。

  1. 自分の身長よりも高い鉄棒や懸垂バーの下に立つ
  2. 肩幅より拳1つ分広い手幅で、バーを握ってぶら下がる
  3. 両足はクロスして膝を少し曲げ、肩甲骨を背中の真ん中へ寄せるようにして胸を張る
  4. 肩を下げ、胸をバーへ近づけるイメージで体をゆっくりと引き上げる
  5. できるだけ体を持ち上げたら、ゆっくりと肘を伸ばして2の状態へ戻る
  6. 4と5を15回繰り返す
  7. インターバルで60秒休憩を取る
  8. 残り2セットを行う

肩は上げず、下げるようにします。肘が腰にぶつかるようなイメージで行うと、背中の筋肉が使いやすいです。足で勢いをつけないように注意しましょう。

4-2.ワイドプルアップの正しいやり方

手幅を大きくとることで、首から肩にかけての僧帽筋へ刺激を送れます。

  1. 肩幅よりも広く手幅をとり、バーを軽く握る
  2. 両足はクロスして膝を少し曲げ、肩甲骨を寄せて胸を張りぶら下がる
  3. 肩を下げるようにして、背中の筋肉でゆっくりと体を引き上げる
  4. 胸をバーに近づけるようにして限界まで体を引き上げたら、ゆっくりと2の状態に戻る
  5. 3と4を15回繰り返す
  6. インターバルで60秒休憩を取る
  7. 残り2セットを行う

ワイルドプルアップのときには、バーは強く握らずに指をひっかける感じで軽く握るようにしましょう。でなければ、腕に力が入って負荷が背中から逃げてしまいます。

4-3. ナロープルアップの正しいやり方

基本のプルアップよりも手幅を狭くして、三角筋後頭部を鍛えましょう。

  1. 手幅を肩幅と同じくらいか狭い場所でバーを握る
  2. 両足はクロスして膝を少し曲げ、肩甲骨を寄せて胸を張りバーにぶら下がる
  3. 背中の筋肉を使ってゆっくりと体を引き上げていく
  4. 胸をバーに近づけるイメージで、アゴがバーを越えるまで体を持ち上げる
  5. 限界まできたらゆっくりと肘を伸ばし、2の状態に戻る
  6. 4と5を15回繰り返す
  7. インターバルで60秒休憩を取る
  8. 残り2セットを行う

手幅を狭くすることで、特に腕に力が入りやすくなります。背中の筋肉を強く意識することで刺激を送れますので、トレーニング中は広背筋を意識してください。腕ではなくて肩や背中が疲れていればOKです。

5. プルアップで得られる効果4つ

プルアップは最も基本的な筋トレの1つですが、自重トレーニングの中でもきついメニューです。一般的に筋トレを始めたばかりの方はプルアップをまったくできないことが普通ですので、自分で努力をしていかなければなりません。そのため、継続するにはそれなりのモチベーションが必要となります。

ここで、プルアップで得られる効果4つを以下に紹介しましょう。筋トレのつらさにめげそうになったときには、効果を思い出して踏ん張ってください。

  • 逆三角形の体形になる
  • トレーニングをする場所が限られない
  • 肩の可動域が広がる
  • 姿勢が良くなる

5-1. 逆三角形の体形になる

プルアップは広背筋をメインターゲットで鍛えていく筋トレメニューです。広背筋のところで説明したように、ここを鍛えると逆三角形の体形になります。肩から腰までがすっきりと引き締まり、背中が広くみえるために洋服も似合う体になります。

プルアップを継続すれば、男らしさとともにスタイリッシュさも手に入れられるでしょう。

5-2. トレーニングをする場所が限られない

プルアップは基本的にぶら下がることができればどこでもトレーニングが可能です。足は膝で軽く後ろへ曲げられますので、自分の身長より低い家具でもやろうと思えばトレーニングできるのです。

負荷も自分の体重なので、自分さえいればOKで特別な道具を必要としません。どこでも思い立ったときにトレーニングができる、便利な筋トレメニューです。

5-3. 肩の可動域が広がる

プルアップでする腕を引いて体を持ち上げる動きは、背中と肩関節を良く使います。その結果、肩の可動域が広くなります。

肩の可動域が広がれば上半身の他の筋肉部位、たとえば胸の筋トレでも効果が上がります。全体の筋トレ効果を上げるためにも、プルアップは有効です。

5-4. 姿勢が良くなる

背中の筋肉を鍛えれば背骨の周辺の筋肉もしっかりとするため、姿勢がよくなります。また猫背や肩こりが改善されるほか、腰痛の予防や改善も期待できます。肩や腰に不安を持つ方は、積極的にプルアップをしていきましょう。

6. プルアップの効果を高めるコツ5つ

せっかく行うトレーニングですから、効果をさらに高めたいと願う方は多いでしょう。続いてはプルアップの筋トレ効果を高めるコツ、以下の5つを紹介します。

  • 広背筋を意識する
  • 胸をしっかりと張る
  • 徐々にウエイトを上げる
  • 呼吸を忘れない
  • 手首に注意する

6-1. 広背筋を意識する

プルアップは広背筋を使って自分の体を持ち上げる筋トレメニューです。もしも疲れるのが腕ばかりとか、背中への刺激をさほど感じないと思ったら、1度トレーニングを中止してフォームの確認から始めましょう。

広背筋を意識することで、より刺激が送れます。筋トレの効果をアップさせるためには必要なことですので、トレーニング中はしっかりと広背筋を意識してください。

6-2. 胸をしっかりと張る

背中の筋肉をうまく使うためには、胸をしっかりと張る必要があります。腕を使っているため見た目は腕の筋トレに見えますが、実際には背中の筋肉を使わないとうまく上下運動はできません。

胸を張れば背中を意識しやすくなります。故に、体を引き上げやすくもなるのです。プルアップ中は胸を張り、肩を下げてバーに胸を近づけるイメージを持ったままで行ってください。

6-3. 徐々にウエイトを上げる

プルアップは自重トレーニングです。そのため、基本的には自分の体重のみが負荷です。しかし全身の筋肉が発達してくるにしたがって、自分の体重だけでは筋肉に刺激を与えられなくなってきます。

より負荷が欲しいときには徐々にウエイトをあげることが筋肉肥大のコツ。ウエイトベルトをつけたりディッピングベルトをつけたりして負荷を強くしていきましょう。

重量は10kg程度からスタートし、自分の筋肉と相談しながら少しずつあげていってください。いきなり高重量でやろうとすると、手首や腰のケガにつながります。焦らず徐々にウエイトを増やしていきましょう。

6-4. 呼吸を忘れない

全ての筋トレ、ストレッチなどにおいては、最も大切なことは呼吸をきちんとすることです。そのため、呼吸法を変えるだけで筋トレの効果が大幅にアップすることもあります。

基本としては、筋肉に刺激が伝わるときに息を吐き、筋肉を緩めるときに息を吸ってください。力をいれようとするとつい呼吸を止めてしまうことがありますが、意識して呼吸は忘れないようにしましょう。

なお、呼吸は鼻ですることが基本とされていますが、どうしてもしんどいときには口呼吸でも構いません。

6-5. 手首に注意する

体を引き上げようとする際に、手首に余計な力が入ってしまうことがあります。手首に力が入ると熱がそこに溜まり、ケガをしやすくなります。そのため、できるだけ手首には注意して力が入らないようにし、背中と胸、腕の筋肉を使って体を引き上げていきましょう。

7. プルアップが難しい方が先にすべき筋トレ

よし!プルアップで上半身の筋肉をつけるぞ!そう考えてトライしてみたものの、2回ほどで筋力の限界が来てしまった…という方もいます。

そんな方は、まず先に他の筋トレをしてほどほどに筋力をつけてからプルアップに挑戦するのも1つの方法です。では、どんな筋トレを準備として行えばいいでしょうか?

おすすめは以下の4つの筋トレメニューです。

  • インバーテッドロウ
  • デッドハング
  • ネガティブレップ
  • アームカール

7-1. インバーテッドロウ

インバーテッドロウは、リバースロウやリバースプッシュアップと呼ばれることもある筋トレメニューです。足を地面についたままでバーにむけて体を引き上げるためプルアップよりも負荷が少なく、筋トレ初心者でもやりやすいでしょう。

広背筋・菱形筋・僧帽筋と腹筋も強化できますので、積極的にトライしてみてください。

  1. ジムではスミスマシンなど、自宅では腰程度の高さの家具、公園では腰程度の高さの鉄棒の前に立つ
  2. 両手でつかまるところよりも足を前に出し、かかとを地面についてバーなどに両手(順手)で捕まって体を支える
  3. かかとを地面につけつま先は立てた状態で、体全体を一直線にしたまま息を吐き、腕を曲げて体をバーへ近づける
  4. 息を吸いながら、ゆっくりと肘を伸ばして体を下ろす
  5. 3と4を10回繰り返す
  6. インターバルで60秒休憩を取る
  7. 残り2セットを行う

両手でバーを握ってかかとをつけ、体全体を支えます。このときかかとから首までは一直線に保ちましょう。斜め度合いが低くなれば低くなるほど、難易度は上がります。初心者の方は、垂直に近い角度から始めても構いません。

手幅は肩幅よりも広めが基本で、順手です。しかし僧帽筋に刺激を送りたい場合には、逆手でトレーニングをしてください。

7-2. デッドハング

プルアップをするためには、バーにぶら下がったままの状態から落ちずに堪える力が必要です。そのため、プルアップは中々回数ができないという悩みを持つ方は、まずデッドハングをして「ぶら下がりキープ」の練習をしてください。

やり方は簡単で、家具や鉄棒、何でもいいのでずっとぶら下がるだけです。

  1. 最初の段階では、自分が疲れるまで5秒から10秒程度、バーなどにぶら下がるこの時点では「ぶら下がる」というだけの練習です。慣れてくればセット数や時間を徐々に増やしていきます。
  2. 1ができるようになったら、次は限界までぶら下がり続ける疲れたと感じた時点ではなく、もうバーをつかんでいられないという力の限界までぶら下がります。限界が来て落ちたら、インターバルで90秒の休憩を取り、また同じように限界がくるまでぶら下がりましょう。
  3. 2ができるようになったら、休憩時間を短くして同様に限界までぶら下がってみる

バーの握り方は好きなようにして構いませんが、順手、逆手、手幅の間隔を狭く、広くといろいろ試してみてください。

7-3. ネガティブレップ

ネガティブプルアップとは、プルアップの体を上からゆっくりとおろすという動作だけを繰り返すトレーニングです。プルアップでは体を下ろすときにも力を必要とするため、下げる動作をしっかりと繰り返しておくことも大切。

ネガティブプルアップをすれば、握力の向上と全体的な筋力を強化可能です。

  1. 台などを用意してその上に乗り、バーを両手で握ってプルアップで体を上へあげた状態を作る
  2. 台から足を離し、体を浮かせる
  3. 肘を伸ばしてできるだけゆっくりと体を下へおろしていく
  4. しばらくそのままでぶら下がる
  5. 再び台の上へ上り、1から4までを10回繰り返す
  6. 3セット行う

お腹に力をいれ、できるかぎりゆっくりと体をおろすのがコツです。広背筋と腹筋を意識しましょう。

7-4. アームカール

プルアップは背中の筋肉を使いますが、当然、腕の筋力もそれなりに必要です。上腕二頭筋をアームカールで鍛え、プルアップに耐えられる筋力をつけていきましょう。

アームカールにもいろいろとメニューがありますが、ここではベーシックな筋トレメニューであるダンベルカールを紹介します。ダンベルで腕の筋肉を刺激し、筋力をアップさせましょう。

準備するのはダンベルだけですので、自宅でも気軽に行えます。自宅にダンベルがある方は隙間時間にはダンベルカールを行い、腕の筋力をあげていきましょう。

  1. 両手にダンベルを持ち、足を腰幅に開いて直立する
  2. 自然に下ろしたダンベルを、肘が90度になるまで持ち上げる
  3. 肘をのばしてゆっくりとダンベルを下げる
  4. 反対側も同様に行う
  5. 左右交互に1回ずつを1回とし、10回繰り返す
  6. インターバルで30秒休憩を取る
  7. 残り2セットを行う

注意点は、ダンベルを持ち上げているときに肩があがらないようにすることです。また、ダンベルを戻すときには肘をのばし切らないようにしてください。小指から持ち上げるように意識すると、上腕二頭筋により刺激を送れます。

ダンベルカールは片手ずつでも両手同時でも構いません。やりやすい方で行ってください。

まとめ:プルアップで背中や上半身全般を鍛えよう!

最強の自重トレーニングと言われることもある、プルアップ(順手懸垂)。これをしっかり行えば、背中の筋肉や腕の筋肉、お腹の筋肉に負荷を強く与えられます。

特に背中の広背筋という筋肉はメインターゲットになりますので、逆三角形の格好よい背中がほしいと思っている方は積極的にプルアップを行ってください。

まだ筋力が足りずにプルアップが難しいという方でも大丈夫なように、下準備となる筋トレも紹介しています。ぜひ参考にして、プルアップ成功まで踏ん張っていきましょう。


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